|
【あとがき】
フィクションをバーゲンアメリカマガジンで発表した理由は、コラムの題材のネタが尽きたからです。
バーゲンアメリカは、私が経営していたアメリカの日本向けオンラインショップで、97年から
メールマガジンを発行していました。6年も毎週、締め切りに追われていると、さすがに、書くことがなくなってしまう。そこで、お笑いネタでも書いてやろうと思って、ジョークを1本書いたのです。早速、編集部に送ってみると、評判が悪いのです。
まず、メルマガで発表するには、文章が長すぎるというのです。メルマガのコラムは、長くて4000文字、2000文字ぐらいが適当です。にも関わらず、私は6500文字の大作(?)を執筆してしまったのです。しかも、下品だからショッピングのメルマガにふさわしい内容ではないと言われてしまいました。気を悪くした私は、編集者などの友人たちに、この文章をメールしました。ところが、「ちょっと、長いんじゃないの」とか、「3回読んで、ようやく分かったよ」とか、反応がイマイチなのです。「大笑いした」と言ってくれた友人は皆無でした。
頭にきた私は、笑ってくれないなら、泣かしてやると、今度は、泣ける文章を書き出しました。ところが、泣ける文章ほど、難しいものはありません。いくら考えても何も思いつかないのです。文章が書けず、泣き寝入りする日々が続き、一方で、そんなこととはよそにバーゲンアメリカマガジンの締め切りの方は情け容赦なく毎週やってきました。
自分の才能のなさに泣けました。本当に。
そんなある日、私は、テレビで韓国のバラード曲のミュージックビデオを見ていましたた。韓国語の歌詞はわからないのだが、映像を見ればだいたいの趣旨はわかります。韓国では、この手の泣きのバラード曲が非常に人気が高いのです。このイ・スヨンの「I believe」は「会おうと約束したのにあなたは来なかった」というのがテーマです。「もうあなたはこの世には」で締め括る濠泣きのバラードなのです。最初のフィクション「交換日記」は、このビデオを何度も見て書きました。
題材は、骨髄移植について書こうと前から考えていました。白血病は、募金よりも、骨髄ドナーが増える方が、患者さんの助かる可能性が上がります。しかし、骨髄移植に関しては、まだまだ一般に理解されておらず、1億人もいる日本国内で、ドナー登録者はたったの13万人強(2001年当時)なのです。バーゲンアメリカマガジンやその他、私が執筆しているメルマガの総読者数は13万人規模でした。少なくとも全国のドナー人口と同程度の人にメッセージが伝わるのではないかと思ったのです。(募金ももちろん必要です。)
しかし、白血病で少女が死ぬという題材は、使いつくされたテーマであり、下手をするとどっかのテレビ番組と似たような話になりかねません。そこで、自分の実体験をある程度織り交ぜて、文章を書いたのです。
泣ける文章を書くには、まず、自分が泣きながら書かないと、泣けないと思いました。だから、イ・スヨンのバラードを聴きながら、泣きながら書きました。書き終わったころには、もう体がぶるぶる震えていました。
そして、このような文章を果たしてメルマガで発表してよいものか迷いました。このホームページを読んで頂いてお分かりの通り、普段は、「もろっこいんげん」だの、アメリカの暮らしだの紹介していたので、いきなりフィクションを出して読者がどう反応するかがわからなく、不安でした。編集部にとりあえず出してみると、今度は「泣けました」と返事があり、これはと思い、発表することにしました。
レスポンスは、配信して直ぐに来ました。そして、沢山のメールを頂いたのです。これから、ドナー登録をしますと言っていただいた方。実際に骨髄ドナー経験のある方から、人助けをすることがこれほど素晴らしいことだとは思っていなかったと、ドナーになった感想までいただいたりしました。
ところが、あまりに描写がリアルなせいか、会社の人や知人から「これは本当の話ですか?」と聞いてくる人が絶えないのです。3作目の「タイムカプセル」を書いた時は、こんな話は絶対にありえないよなと思いながら書いたのだが、この時も同じような反応で、自分としては困惑しました。
私のフィクションはあくまでも、フィクションです。もし、このような悲しいことが自分の身に起きていたら、絶対に書いていなかったと思います。また、このようなことが起きては欲しくもないし、起きて欲しくないからこそ、こうしてフィクションとして発表しました。
とむさとう 2002年12月
2003年、1月、私は、このホームページを立上げようとしていました。その時、以前書いた文章を
読んで、自分のフィクションを紙の媒体として出してみたいと思いました。そこで、試行錯誤をし、
自分で、印刷屋に依頼して、文庫本にしたのです。
文庫本フォーマットにする上で、「交換日記」を読み返してみて、もう1つ何かが足りないと思いました。
それは、骨髄移植に関することについて何も触れられていなかったことです。そこで、
新たに、続編ではないが、フォローとして、骨髄移植に関するフィクションを書いたのです。
その文章が、「大切なもの」です。このフィクションを書くにあたって、私は、過去にドナー
になった経験のある方をインタビューしたり、ホームページ等を検索して、できる限り、リアルに
骨髄移植のプロセスを分かりやすく、フィクションとしてまとめました。
このフィクションは、過去にドナーとなって、その貴重な体験談をネットで公表して、啓蒙活動を
行っている方々の経験をベースにしています。皆様の心温かい、努力に敬意を表します。
ありがとうございました。
とむさとう
info@tomsato.jp
2003年4月1日
読者からのメール
このフィクションに関する感想は 電子メールでお願いいたします。
また、この文章の転送可能テキスト版をご希望されるか方は、「フィクションテキスト希望」と
書いて 電子メールをお送りください。
新刊 とむさとうのショート
フィクションコレクション発売中
(c) Copyright Tom Sato, All Rights Reserved |